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法人税の繰越欠損金|適用できる条件や期間は?

法人は、利益に対して法人税の納税が義務付けられています。

法人税は益金から損金を差し引いた金額に対して課せられる税金です。

損金の方が大きい、つまり一般的な言い方をすれば赤字経営の場合、法人税はかからないということになります。

黒字の場合には、経費などを差し引いた課税所得に対して法人税がかかります。

法人の益金よりも損金が大きい状態となり発生した、マイナスの部分を「欠損金」といいます。

分かりやすく言えば赤字の金額ですが、税務上では「欠損金」という言葉を使います。

法人は、前事業年度以前のこの欠損金を繰り越すことで、翌事業年度の法人税を低く抑えることができます。

今回は繰越欠損金を利用する条件や、利用する際の注意点などを解説していきます。

繰越欠損金ができる条件

繰越欠損金はどんな企業でも無条件で利用できるわけではありません。

まずは、繰越欠損金を利用できる条件を確認していきましょう。

青色申告をしていること

繰越欠損金を行える条件として、その法人が青色申告をしていることがあります。

法人が青色申告をするためには、所轄税務署に青色申告の承認申請書を提出する必要があります。

会社設立1期目から青色申告を行いたいときの提出期限は、基本的に設立日から3か月以内です。

もしも決算日を会社設立日から3か月より前に設定していた場合にはその前日までに申請が必要になります。

なお、これまでは白色申告をしていた法人が、青色申告に切り替えたい場合には、適用したい事業年度が開始される日の前日までに申請する必要がなります。

 

ちなみに法人の青色申告にはメリットやデメリットがあります。

青色申告は複式簿記が必要であり、単式簿記の白色申告と比較すると、税務処理が複雑化するという点がデメリットです。


一方メリットは、複式簿記で正確な申告を行うことを条件に、この記事で紹介している欠損金の繰り越しが可能となることがまず挙げられます。

ほかにも、青色申告にはいくつか特典がありますので簡単に紹介します。

 

  • 欠損金の繰戻しによる法人税の還付
  • 中小企業等の少額減価償却資産の損金算入(適用期限2026331日まで)
  • 中小企業投資促進税制の活用(適用期限2025331日まで)
  • 適用期限は20247月現在

 

ここでは詳細は触れませんが、特に中小企業にとって特典が多い確定申告方法といえます。

 

複式簿記となり処理が複雑化するというデメリットに関しては、税理士に依頼することで解消できますので、ぜひ検討してみてください。

欠損金の生じた事業年度に青色申告で確定申告をしている

法人の繰越欠損金の制度を利用するには、欠損金の生じた年に青色申告していることです。

欠損金の生じた事業年度以降も継続して決算申告をしている

繰越欠損金の制度を利用するためには、確定申告を継続している必要があります。

多くの法人は、決算を行っているかとは思いますが、申告をしていなかった場合には利用できません。

帳簿類等必要書類を保管していること

税法上帳簿に関する書類は、7年間保管しておくことが義務付けられています。

ただし、繰越欠損金を利用する場合、帳簿類などの必要書類は10年間保管しておかなければいけません。

保管しておくべき書類には以下のような書類が含まれます。

 

・総勘定元帳

・仕訳帳

・現金出納帳

・売掛金元帳

・買掛金元帳

・固定資産台帳

・売上帳

・仕入帳

・棚卸表

・貸借対照表

・損益計算書

・注文書

・契約書

・領収書

 

保存期間は、欠損金が発生した事業年の確定申告期限の翌日から10年間のため、しっかり保管しておくことが大切です。

繰越欠損金を利用できる期間

繰越欠損金を利用できるのは原則10年間です。

なお、201841日以前に開始した事業年度の欠損金に関しては、最長9年間が利用期間となります。

繰越欠損金のメリット

繰越欠損金は、法人税を節税するためには非常に有効な制度です。

繰越欠損金を使えるメリットは、翌事業年度以降に支払う法人税を低くできる可能性があることです。

例えば1,000万円の欠損金が出た期の次の期の課税対象額が500万円だった場合を考えてみましょう。

前期の欠損金1000万円から500万円を差し引くと、−500万円となるため課税所得を0円で申告ができます。

法人税はその事業年度の課税所得により税額が決まるため、欠損金を差し引いた額がプラスに届かないときには、法人税の支払わずにすみます。

更に翌事業年度で差し引けなかった欠損金は、翌々事業年度以降にも繰り越すことができます。

繰越欠損金の注意点

繰越欠損金は、古い年度からに生じた欠損金から順番に差し引く必要があります。

また、欠損金が出た翌事業年度の黒字に欠損金を繰り越すより、2年後の黒字が大きな年に繰り越した方が節税効果が大きいとしても、翌年をスキップして2年後に繰り越すことはできません。

まとめ

今回は繰越欠損金の条件について解説しました。

繰越欠損金は、法人税の節税対策として有効な制度です。

 

とはいえ一方で繰越欠損金が毎年あるような場合には赤字決算が続いていることになるので、事業の見直しが必要になってくることもあります。

 

繰越欠損金について不安なことや困ったことがある場合には、法人税務や経営アドバイスなどを得意とする税理士に相談することを検討してみてください。

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所属団体名古屋税理士会

税理士佐藤昌哉(さとう まさや)

  • 所属団体

    名古屋税理士会名古屋東支部(118216)

    認定経営革新等支援機関

  • 経歴
    理系の大学を卒業後、法律事務所に勤務。資格の取得に興味を持つ。平成22年、税理士試験5科目(簿記論、財務諸表論、所得税、消費税、相続税)合格。平成23年4月21日税理士登録。その後、独立し、佐藤昌哉税理士事務所を設立・開業する。
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